事例8
  • 死亡5年経過でも特別遺族給付金申請ができる事例

  • 職業/業務内容

    電気工事士

  • 症状

    胸膜中皮腫

  • 現在の状況

    故人

  • 年齢

    70代

  • 勤務形態

    正社員

  • ばく露時期

    昭和30年(1950年)代~平成10年(2000年)代

  • ばく露年数

    約50年

  • ばく露した状況

    被災者は、電気工事士として一般の業務に従事したことによって、アスベストにばく露

  • 申請をお勧めした給付金制度

    ④特別遺族給付金

  • ご相談者

    被災者の子

①ご相談内容

被災者は、1950年代~2000年代まで50年近く、電気工事士として配線工事の業務に従事していました。配線工事をした建物にアスベストが使われており、そこでアスベストにばく露してしまったとのことでした。被災者は、生前に、環境再生保全機構に対し石綿健康被害給付金の申請をし、この受給をしていました。被災者が亡くなった後に、環境再生保全機構から「建設アスベスト被害給付金制度に関するお知らせ」が送られてきたことで、「これは何だろう?」と被災者の息子さんがインターネットで色々と調べているうちに、当事務所のホームページをご覧になり、当事務所へ連絡をくれたとのことでした。

②弁護士からのアドバイス等

1.アスベスト被害者へ救済制度の説明

まず、アスベスト被害者救済制度について、大きく3つの制度があります。その中の1つである労災保険の遺族補償給付には、消滅時効があり、被災者死亡から5年経過してしまうと消滅してしまいます。今回、ご相談者が当事務所に相談に来た段階で、被災者が亡くなってから5年以上が経過していたので、遺族補償給付を申請することができませんでした。しかし、アスベストの労災被害者の方には、その被害の特性上、石綿による健康被害の救済に関する法律第三章(59 条~)によって、特別遺族給付金の申請が可能なことがあります。本件では、特別遺族給付金の申請をすることが可能だとご説明しました。

※特別遺族給付金とは・・・業務で石綿による健康被害を生じた労働者や特別加入者が、労災保険の給付を受けずに石綿による疾病で亡くなったとき、その遺族に対する救済処置として設けられた制度のことです。
※特別加入者とは・・・一人親方や法人役員など、労働者でもない人でも、労災保険に特別に加入することによって、労災保険の適用を受けることができる制度です。

2.労災保険を申請できていたら・・・

被災者は生前、主治医から「労災保険の認定は難しいが、石綿健康被害救済制度は認定してもらえるかも」と言われたこと及び被災者自身「労災保険申請をして会社に迷惑をかけたくない」と話していたことで、労災保険の申請は諦め、石綿健康被害救済制度にのみ申請し、認定されました。しかし、労災保険を申請したことにより、会社に迷惑がかかるということはありません。また、アスベストばく露状況や中皮腫で石綿健康被害給付金が下りたことも踏まえれば、消滅時効前に労災保険へ申請していれば、高い可能性で労災保険が支給されていたと考えられる案件でした。

労災保険を申請するメリットとしては、特別遺族給付金と比較して、より多くの給付額を獲得できます。そのため、今回のようなアスベスト被害に遭った際は、とにかく「ダメ元」でも遠慮せず労災保険は申請することをオススメしています。
幸いにも、本件では、特別遺族給付金が利用できたので、これを申請することで多少なりとも労災保険のメリットを受けることができると思われます。

③所感・まとめ

本件は、既に被災者がお亡くなりになってから、5年以上が経過していました。時間が経つにつれ、今回のような労災保険の時効で消滅してしまうケースがありますし、医療記録も破棄・散逸してしまうため、アスベスト関連疾患の立証も難しくなっていきます。医者から労災の申請は難しい・会社に迷惑がかかってしまうなどと諦めてしまう前に、アスベスト給付金申請に注力している専門家にご相談・ご依頼することをおススメ致します。