特別遺族給付金の請求期限が10年延長されました

2022年6月13日に、いったん2022年3月27日で請求期限が切れた「石綿健康被害救済法」の改正法が可決・成立し、請求期限が10年間延長され、2032年まで請求できることになりました。

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1.石綿健康被害救済法とクボタショック

この法律の歴史や沿革を考える上で重要なのが、クボタショックです。
2005年にクボタの旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の周辺住民が、肺がん・中皮腫・石綿肺といったアスベスト関連の疾病を患っている旨テレビや新聞で一斉に報道され(いわゆるクボタショック)、アスベストによる健康被害が注目されました。

⑴ 周辺住民は救済されない!?

工場で働いている方のアスベスト健康被害は、既存の制度である「労災保険」でカバーされるのですが、工場の周辺住民を救済する特別な法律はありませんでした。

⑵ 労災保険は請求期限が過ぎてしまう!?

他方で、労災でカバーされるとしても、石綿を吸い込んでから(曝露といいます。)、中皮腫や石綿肺を発症するまで一般的に20年以上の潜伏期間があります。労働者の死亡後に、遺族がアスベストとの因果関係に気づき、労災申請(遺族補償給付)をしようにも、労災申請は死後5年を経過すると申請ができません。

2.既存制度の隙間を埋めるための石綿健康被害救済法

そこで2006年に「石綿健康被害救済法」が成立しました。この法律の目的は大きく二つあります。第一に、周辺住民(非労働者)のアスベスト被害救済です。第二に、アスベストを業務で取扱い、アスベストが原因で亡くなってから5年以上が経過して、労災補償を受けずに亡くなった労働者の「ご遺族」に対して「特別遺族給付金」を支給することです。

この石綿健康被害救済法の「特別遺族給付金」にも請求期限があり、直近では、2022年3月27日が請求期限でした。そこで、アスベスト被害者やご遺族の方が延長を求める運動を行ない、改正石綿健康被害救済法の成立につながりました。

これにより、2006年の法律制定・施行前にアスベストに曝露し、肺がん・中皮腫・石綿肺などのアスベスト関連疾患が原因で亡くなった労働者のご遺族が請求できる「特別遺族給付金」の請求期限は、2032年まで10年間延長されました。

シーライト藤沢法律事務所では、「特別遺族給付金」のほかにも、「労災保険」「石綿健康被害給付金」「建設アスベスト給付金」といったアスベスト被害給付金に関するご相談を承っております。お気軽にご相談下さい。

弁護士 小林玲生起 写真 弁護士法人シーライト藤沢法律事務所

弁護士 小林 玲生起

神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。