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ボイラー工である法人役員の事例
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職業/業務内容
ボイラー工
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症状
肺がん
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現在の状況
治療中
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年齢
60代
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勤務形態
正社員、法人役員
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ばく露時期
昭和50年(1970年)代~平成18年(2006年)
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ばく露年数
約30年
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ばく露した状況
ボイラーのメンテナンス業務の際に、アスベスト含有のパッキンや保温断熱材について整形・加工・取付などの作業を行ったことにより、アスベストにばく露した。
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申請をお勧めした給付金制度
①労災保険②石綿健康被害救済制度
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ご相談者
ご本人
①ご相談内容
被災者ご本人から、お問合せいただきました。
被災者は、昭和 50 年代に、父の経営する会社に労働者として入社した。入社後は、ボイラー工として、ホテルや旅館、工場などの現場で、ボイラーのメンテナンス業務に従事した。このメンテナンス業務では、アスベストの含まれたシートパッキンや、アスベストヤーンの整形・加工作業、アスベストの含まれた保温断熱材をボイラーに巻き付けるなどの作業を行っていたことにより、アスベストにばく露した。
その後、被災者は会社の役員となったため、労働者ではなくなったが、アスベスト製品の製造・使用等が全面的に禁止されるまでは、ボイラー工として同様の業務に従事していた。最近になり、呼吸困難が出現したため、病院を受診したところ、原発性の肺がんと診断された。
父も当時を知る従業員も、既に亡くなってしまっているので、労災保険に加入していたかはよくわからないが、労災保険に申請できるのか?
また、医師から石綿健康被害救済制度に申請してみるようアドバイスを受けたが、どのようにしたらいいか?
以上のようなご相談をいただきました。
②弁護士からのアドバイス等
1.労災保険の対象者
労災保険とは、労働者災害補償保険のことで、その名のとおり、労働者を対象とした保険制度です。そのため、基本的には、法人役員・一人親方・個人事業主などは、労災保険の対象外です。しかし、役員・一人親方・個人事業主であっても特別加入制度に加入している場合には、労災保険の対象となります。また、勤務先との関係では「個人事業主」扱いされていたが、働き方次第では、実質は「労働者」性を認められて、労災保険が利用できることもあり得ます。
本件の場合、役員となってからは特別加入をしていない、ということでした。しかし、父の会社で労働者として働いていた時期があることなどから、労災保険の対象として認められる可能性があることをお伝えしました。
2.労災保険と石綿健康被害救済制度
労災保険と石綿健康被害救済制度は、どちらか一方からしか給付を受けることができません。しかし、あまり知られていないことですが、申請自体は、同時に申請することができます。
どちらの制度も結果が出るまでには、数ヶ月から半年以上の時間がかかりますので、両方の制度へ同時に申請することをお勧めしました。
③所感・まとめ
建設業を中心として、個人事業主の方や、所謂一人親方の方、法人役員の方からは、しばしば本件のようなご相談をいただくことがあります。本件の被災者は、労働者として認められる可能性がありましたが、たとえ労働者として認められなくても、石綿健康被害給付金を受けられる制度があります。
労災が認められるかわからない、とお悩みの方は、まずは専門家へご相談なさることをお勧めします。