労働災害Q&A

よくある質問

労災の基本

Q. 労災の被害にあった直後です。まず、何をすればいいかわからない。

先週、夫が仕事中に機械に挟まれて、今入院中です。病院の方から「仕事中のケガなので、労災の申請をしてみてはいかがでしょう」とアドバイスしていただきました。スマホで「労災」と打って、検索してみたのですが、専門用語が多くてよくわかりません。弁護士さん教えてください。

A. 事故直後で治療中ということなので、まずは「療養補償給付」の申請をします。これは労災保険に対して、治療費を支払ってもらうための手続きです。詳しくは、厚労省HPで公開されている「療養(補償)等給付の請求手続 」パンフレットをご覧ください。

また、休業により給与支払いがストップしますので、「休業補償給付」の申請もしたほうがよいでしょう。こちらも、厚労省HPで公開されている「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続 」パンフレットをご覧ください。

シーライト藤沢法律事務所では、事故直後のご相談も承っております。療養補償給付や休業補償給付の申請に必要な資料な資料の取寄せなども含めご相談を承ります。

労災被害者のご本人・ご家族は、初回相談50分無料です。お気軽にご相談ください。
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Q. 夫の勤務先が労災を使わせてくれません。

夫は建設会社に勤めています。夫の勤務先は、夫が労災を使うに非協力的です。「転んでケガをしたのは、夫のミス(不注意)であって、会社の加入している労災を使うのはおかしい」などと言っています。今、夫は病院に入院しています。療養補償給付の手続きをして、治療費はこの給付金から支払ってもらいたいです。また、休業補償給付の手続きをして、給与・生活費の埋め合わせをしたいです。労災保険申請は、会社の許可がないと使えないですか?

A. 労災保険申請・利用には、会社の許可は必要ありません

申請書にご主人のご勤務先の事業主証明欄があります。しかし、ご勤務先の協力が得られず、この欄が空白の状態で労働基準監督署が申請を受け付けないかというと、そうではありません。事業主証明欄に勤務先が証明拒否した経緯などを文書で説明して申請すれば、労基署には受理されます。詳しくは、 当事務所HPの労働災害Q&Aをご覧ください。

シーライト藤沢法律事務所では、「勤務先が労災を使わせてくれない」場合でも、ご相談を承っております。
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Q. 休業補償給付って何ですか?

夫は製造ラインのベルトコンベアに下半身を巻き込み、後遺障害が残りそうです。復職は難しいと思われます。妻の私はスーパーでレジ打ちのパートをしていますが、夫の収入にかわるほどのお給料ではありません。夫の収入にかわるような定期的な収入をどうにか確保したいのですが、公的な制度はありますか?

A. 労災保険に「休業補償給付」という仕組みがあります。申請をすれば、休業の4日目から支給され、1日につき給付基礎日額の80%(=法定保険分60%+特別支給分20%)が受給できます。

生活費のお支払いもあるかと思いますので、お早めに申請手続きすることをオススメいたします。厚労省HPで公開されている「休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続 」パンフレットをご覧ください。

また、ご主人は後遺障害がありそうとのことですので、休業補償給付の申請以外にも、症状固定後に労災保険に対して障害補償給付申請を行なう可能性がありそうです。より詳しくは、厚労省HPで公開されている「障害(補償)等給付の請求手続 」パンフレットをご覧ください。

シーライト藤沢法律事務所では、治療中であっても、障害補償給付申請や示談交渉に関する相談を承っていますので、お気軽にご相談ください。
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Q. 後遺障害が残りました。労災保険に対して何の請求をすればいいですか?

自動車整備工場で働く夫は、同僚の不注意などもあり、親指を含めて手の指を3本失いました。仕事ができないのはもちろん、お箸が持てない、文字が書けないなど、日常生活が不自由になりました。労災の障害補償給付の申請ができるそうですが、障害保障給付申請の仕組みや流れがわかりません。弁護士さん教えてください。

A. 後遺障害が残ると「障害補償給付」の申請ができます。後遺障害等級は障害が重い順に1級から14級まであります。親指を含めて手の指3本を失ったとのことで、7級に該当する可能性があります。

大まかな申請方法や流れは、

① 診断書などの医学的資料を取り寄せて、労働基準監督署に提出
② 労基署が医学的なことを中心として調査
③ それに基づき労働基準監督署長が等級を認定、指定の口座に該当の金額を支払います。

厚労省HPで公開されている「障害(補償)等給付の請求手続 」パンフレットもご参照ください。

シーライト藤沢法律事務所にご依頼いただいた後は、弁護士が医療記録の取寄せなどを行ないます。詳しい申請の流れなどは面談の際に弁護士から説明させていただきますので、お気軽にお問い合わせください。 
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Q. 後遺障害が残ったので、夫の勤務先と示談交渉をしたいです。

夫の勤務先は、従業員数10名の零細建設会社です。社長の個性が強いので、妻の私が示談交渉をしても支払ってくれそうにありません。被害者のみなさんは、ご自身で勤務先と示談交渉をするのでしょうか?

A. 「社長が個性的で示談交渉をするのが難しい」「そもそも話し合いに応じてくれない」「交渉と言っても、何を話せばいいのか分からない」などの理由で被害者の方が示談交渉をするのが困難な場合には、弁護士に依頼される方は多いです。
実際上も、損害賠償額の相場や交渉術などが分からない中で、一般の方が数百万円、時には数千万円以上にもなる賠償金の交渉をすることは、極めて難しいでしょう。

シーライト藤沢法律事務所には、労働災害だけでなく、交通事故で培った豊富な示談交渉実績があります。お気軽にお問い合わせください。 
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Q. 家族が自殺をしました。長時間労働が原因のように思いますが、これを認めてもらうために、何をどのように動けばいいか分かりません。

コンピュータシステム開発会社で、SE(システムエンジニア)として働く夫は、長時間労働の末、過労自殺しました。月によっては、過労死ラインとされる月80時間を超える残業をした月もありました。会社への責任追及も考えていますが、まず何をどうすればよいのか分かりません。

A. 大きく分けて2つのクリアすべき段階があります。まずⅠ「労災保険に過労自殺を業務災害認定してもらう段階」、次にⅡ「会社に損害賠償を請求する段階」です。


Ⅰ 労災保険に過労自殺を業務災害認定してもらう段階

① 資料・証拠収集

まずやるべきこととして、「労災認定」に向けて労災保険申請に必要な資料を収集することが挙げられます。戸籍や死亡診断書といった定型的・形式的な資料だけでなく、被害者の業務が過重であったことを示す証拠(例えば、労働時間の分かる給与明細、家族とのメールやSNSのやり取り、医療記録など)を事案の特徴に照らして的確に収集する必要があります。

② 過重業務の主張書面作成

資料の取付け・収集が終わったら、被害者の業務が過重であったことを示す「ストーリー」を説明する申立書を作成する必要があります。労災保険申請後、労基署が会社から聴取したり、会社から資料を提出させたりして、事実を調査しますが、それに任せっきりにするのではなく、特に重点的に調査して欲しい事実(特に、給与明細やタイムカードなど記録には表れない業務過重性など)を根拠・証拠をもって書面で明確に主張していくことが重要になります。

③ 遺族補償給付の請求⇒労基署の調査

証拠収集が済み、主張書面もできあがったら、いよいよ労災保険申請です。通常は、遺族補償給付を請求します。

請求後は、労基署が会社からタイムカードなどの取付けなどの調査を行いますので、申請者は基本的には待ちになります。しかし、労基者はほぼ必ず、申請者の聴取手続きを行いますので、その際、上記②の書面で表しきれなかったことや、補足・追加の情報をきちんと説明していくことが重要です。

過労自殺の原因が業務である(業務災害性)と認められると、遺族補償給付が支給されます。具体的な内容は、厚労省HPで公開されている「遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続」パンフレットをご参照ください。

Ⅱ 会社に損害賠償を請求する段階

① 保有個人情報開示請求

労災認定されたら、労基署が保有している資料を「保有個人情報開示制度」を用いて、開示請求します。この制度について詳しくは、下記ホームページをご覧ください。ここで開示される資料が、示談交渉や法的手続きにおける重要な証拠となります。
・厚生労働省 神奈川労働局「行政機関が保有する個人の情報を本人に対して開示する制度について
・当事務所 労災HP「保有個人情報開示請求制度について

②  開示資料の精査・損害計算

開示された資料を精査して、一言でいえば「勝ち目」(特に、会社の過失の点)があるのか検討します。併せて会社にいくら請求するのか損害計算を行います。

③  会社との示談交渉

上記②で「勝ち目」があると結論づけられたら、内容証明郵便で会社に損害賠償を請求します。

その後のやり取りは、事案によってまちまちですが、会社に代理人(弁護士)が就いた場合には初期は書面でやり取りし、「詰め」の段階で口頭での交渉を行うことが多いでしょう。

納得のいく損害賠償の提示が得られれば、合意書を取り交わし、支払いを受けて示談を完了させます。

④  会社に対する法的手続き

納得のいく損害賠償の提示が得られない、そもそも会社が交渉に応じないなどの場合には、法的手続きに移行します。典型的には、民事訴訟(裁判)の提起ですが、必ずしもこれに縛られるわけではありません。

以上のように、一口で「会社に責任を追及する」といっても、上記のように行うべきこと・準備することは盛りだくさんです。特に、Ⅰで労災認定されていることが、その後のⅡの段階でも重要です。Ⅰの段階で躓いてしまうと、Ⅱそのものを断念せざるを得ないことにもなりかねませんので、Ⅰの段階から、十分に準備をして労災保険申請することが重要です。

シーライト藤沢法律事務所では、労災保険の申請(請求)をされる前からご相談からを承っております。準備不足のまま労災保険申請する前に、是非ご相談だけでもお気軽にいらしてください。
ご依頼後の費用は、こちらをご覧ください。

弁護士への相談

Q. いつ弁護士に相談すればいいのかわからない。

A. 治療中や労災保険申請前であっても、お気軽にご相談ください。事案にもよりますが、お早めに相談いただければ、治療内容、後遺障害申請のための検査、証拠保全などの豊富なアドバイスが可能です。

シーライト藤沢法律事務所では、事故直後、症状固定後、示談交渉中のいずれのタイミングにおいてもご相談を承っています。お気軽にご相談ください。
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Q. 弁護士費用のお支払いができるか心配です。費用のお見積りをしてもらうことができますか?

A. シーライト藤沢法律事務所では、ご面談の際に弁護士がご遺族からお話しを伺い、医学的資料、労働基準監督署の認定資料などを拝見したうえで、費用のお見積もりを無料で算出します。

また、賠償額が多額になることが予想され、依頼時の弁護士費用(着手金)の支払いが難しい場合には、事案や依頼者様の経済的事情などを考慮したうえで、着手金の後払いプラン、分割支払いプランなどもご提案できますので、お気軽にお申し付けください。
なお、ご依頼いただいた場合の費用概算は、こちらをご覧ください。

Q. 法律相談に行った場合には、必ず依頼(契約)しなければならないのでしょうか?その場で、契約するのでしょうか?

A. 法律相談だけで終了し、依頼(契約)しないということでも全く構いません。また、当所では、「初回相談時にその場で契約を求める」ということはございません。

初回相談時に契約内容や弁護方針をご説明いたしますので、一旦お持ち帰り頂き、じっくり検討した上で、ご依頼するか否かを決めて頂ければ大丈夫です。ご相談者様が法律相談の場でご契約をご希望されることは、もちろん全く問題ございません。

Q. 依頼した後、打合せなどのために、どのくらい来所する必要がありますか?

A. 案件にもよりますが、過半数の方は0回で済んでいます。裁判にするか否かなどの重要な局面のため打合せが必要になった方でも、1~2回で済んでいることが大多数です。3回以上ご来所頂いている方になるとグッと減り、5回以上ご来所頂いている方は1%未満です。

Q. 裁判になったら、弁護士さんは藤沢から全国各地にある裁判所に行くんですか?シーライトから遠方の裁判所だと、出張日当・交通費が沢山かかってしまわないか、心配です。

A. 結論としては、現在、多くの裁判では、弁護士は出廷しません。なぜなら、現在の民事裁判のインターネット化が進んできており、ごく一部の場合(証人尋問など)を除き、「WEB期日」で済みます。

裁判所の所在が札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡などのどこであっても、当所と全国の裁判所をインターネットでつないで裁判します。そのため、当所から遠方の裁判所の案件であっても、出張日当や交通費が沢山かかるということはありません。詳しくはご面談の際に弁護士に直接お尋ねください。

Q. 相手方から取れる金額よりも弁護士に払う金額の方が多くなってしまう、いわゆる「弁護士費用倒れ」にならないかが心配です。

A. 当所では、「相手方から取れる金額」<「当所にお支払い頂く弁護士費用」となって、依頼者様に経済的マイナスを与えてしまう見通しの案件の受任を、原則として禁止しています。そういう見通しの案件の場合には、法律相談時に明確にお伝えいたします。

また、そこまでいかなくとも、「弁護士に依頼せず、ご自身で解決した方が良い案件」「弁護士ではなく、他士業(税理士、司法書士、行政書士など)に依頼した方が適切な案件」は、法律相談時にその旨きちんとご説明差し上げています。

ご自身の案件が「弁護士費用倒れになってしまわないか」「弁護士に依頼した方が良い案件かどうか」などは、法律相談時にお気軽に担当弁護士にお尋ねください。

労災に関するトラブル

Q. 会社が「労災とは認めない」「労災保険も使わせない」と言って困っています。どうしたらよいですか?

A. まず一般論として、「労災隠し」(労働者死傷病報告書の未提出または虚偽内容報告)は、50万円以下の罰金が科される犯罪です(労働安全衛生法120条5号・122条・100条、労働安全衛生規則97条)。あまりにひどい場合には、労基署に相談しましょう。

また、労災か否か(労災保険が使えるか否か)は、事業主に判断する権限はなく、労基署が判断します。

事業主は、労災保険請求者に対し、請求手続きの助力を行わなければなりませんが(労災保険法施行規則23条1項)、現実には、助力・協力を求めることはできないでしょうから、労働者が請求手続きを進める必要があります。当事務所では、労災保険申請サポートを商品としてご用意しています。

もう一歩理解を進める!~労災隠しはなぜ行われるか?~

「何となく事故が起きたことを隠したい」「労災保険手続きは面倒だ(面倒そう)」という曖昧な理由により、事業主が労災を認めないこともありますが、次のようなことが労災隠しを行う主な動機とされています。
①事業主(または元請業者)が、労基署などの役所から調査・監督・行政指導・行政処分が行われることを恐れる。
②事業主(または元請業者)が、発注者からの今後の受注に影響(発注停止などのペナルティー)があることを恐れる。特に、公共工事の場合には、事故発生に厳しいので、隠す動機が強まる。
③事業主が、労災事故によって労災保険のメリット制の適用に影響する(労災保険料が上がる)ため。
④無災害表彰、社内の安全評価・安全成績に影響を及ぼすため。
⑤下請業者が、元請業者の現場責任者などの評価にかかわるため、「迷惑がかからないように」と思う。
⑥元請業者が、下請業者に災害補償責任を負わせる又は元請業者の労災保険を使いたくないため、虚偽の報告を行う。

参考:「労災かくし」は犯罪です_厚労省

Q. 労災事故をきっかけとして、会社を辞めてしまいました。労災保険は使えないのでしょうか?

A. 自己都合退職・会社都合退職・解雇などに関わらず、労働者である間に起きた業務災害・通勤災害には、労災保険が使えます(労災保険法12条の5第1項)。

Q. 労災事故発生に関して、私(労働者)にも過失がありますが、労災保険は使えますか?

A. 使えます。
ただし、故意に労災事故を発生させた場合には労災保険は給付されません。(労災保険法12条の2の2第1項)重大な過失によって労災事故が発生させた場合には、労災保険が給付されないこともあります(同条2項)。

Q. 社長から「うちは労災保険入っていないから、労災保険使えない」と言われました。

A. 労災保険は、一人でも労働者を雇っていれば原則として強制加入です(労災保険法3条1項、労働保険徴収法3条1項)。

・法的には「労働者を雇っている事業主が労災保険に加入していない」という事態は生じません。したがって、労働者であれば、労災保険を使えます

・単に、事業主が労災保険料を支払っていない(労災保険成立手続きを行っていない)という可能性はありますが、仮にそうであっても、労働者にとって労災保険適用の可否は関係ありません。

このような場合には、労災保険成立手続きを行っていない間に生じた事故に関する労災保険給付の100%を限度として、事業主が政府からペナルティを課されることになります(労災保険法31条1項、同法施行規則44条)。

休憩・通退勤中の事例

Q. 休憩時間中にバスケットボールをして、屋上から墜落して骨折した場合、労働災害に認定されますか?

A. 休憩時間中、労働者は自由行動を許されているので、一般にその間の行為は私的行為といわなければならず、特に事業施設の状況に起因することが証明されない限りは一般に業務起因性はないと言わざるを得ません。

質問の場合についても、積極的に施設の欠落等の存在が立証できなければ、業務災害として認定されない可能性が高いと言わざるを得ません。

例えば、昼食中の落盤事故については業務災害として認定されたケースがある一方で(昭和32年2月22日 基収574号)、休憩中拾った不発雷管で遊んでいて負傷した事故については業務上のものとは認定されなかったケースがあり(昭和27年12月1日 基災収3907号)、参考になります。

Q. 帰宅途中、建築現場から落下した工具が当たりけがをした場合、労働災害に認定されますか?

A. 帰宅途中であっても通勤災害に該当する状況下での事故であれば、労災として認定されます。
通勤災害と認められるためには、「合理的な経路および方法」での通勤(帰社)であることが必要です。

質問の場合も「合理的な経路および方法」での帰宅、例えば、会社に届け出ている経路での事故であれば、通常はこの基準を満たすものと考えられます。なお、他の条件として「通勤に通常伴う危険が具体化したもの」である必要があります。

今回の件では工事現場があり、工具が落ちてくるのは、工事現場のそばを歩いて通勤する以上、避けられなかったことと考えられます。 よって、通勤経路が合理的なものであれば、通勤災害として認められることになります。

Q. 昼休みに昼食をとるため帰宅する途中で交通事故に遭いけがをした場合、労働災害に認定されますか?

A. 労災保険の保険給付の対象となる通勤は、必ずしも1日1回のみと限られているわけではありません。

通勤災害として認定されるには、「就業に関し」ての通勤である必要があります。

質問のケースでは、昼休みの一時帰宅は、一見就業に関するものといえないようにも思われますが、午前の業務を終了し、一度退勤するものとして扱われるため、この間における事故は通勤災害となります。

Q. 勤務中トイレに行こうとしてドアに指を挟まれけがをした場合、労働災害に認定されますか?

A. 当該事故が業務災害として認定されるには

①業務起因性(事故が事業の危険性から発生したものであること)
②業務遂行性(担当業務が使用者の事業の範囲内にあること)
③業務と災害との間に相当因果関係

があることが必要です。

質問の場合についてみると、用便による作業中断中の場合であっても①業務遂行性は認められます。そして、業務遂行性のある状況下で発生した災害は、業務逸脱や恣意的行為でなければ、原則として②業務起因性が認められますので、生理的必要から生じた用便という行為に伴う事故は、通常は業務災害として認定されるものと考えられます。

Q. 手待時間にコンビニに入ろうとした運転手が転んでけがをした場合、労働災害に認定されますか?

A. 帰宅途中であっても通勤災害に該当する状況下での事故であれば、労災として認定されます。
通勤災害と認められるためには、「合理的な経路および方法」での通勤(帰社)であることが必要です。

質問の場合も「合理的な経路および方法」での帰宅、例えば、会社に届け出ている経路での事故であれば、通常はこの基準を満たすものと考えられます。なお、他の条件として「通勤に通常伴う危険が具体化したもの」である必要があります。

今回の件では工事現場があり、工具が落ちてくるのは、工事現場のそばを歩いて通勤する以上、避けられなかったことと考えられます。 よって、通勤経路が合理的なものであれば、通勤災害として認められることになります。

Q. 遅刻しそうになった従業員が赤信号で横断歩道を渡ってけがをした場合、労働災害に認定されますか?

A. 通勤災害として認定されるためには、通勤が「合理的な方法によるもの」と認められる必要があります。

また、故意による行動から事故が発生した場合、労災として認定されません。

質問のケースは、通常であれば、徒歩自体は合理的な方法によるものと認められますが、交通法規の違反は合理的な方法といいうるのかという問題のほか、故意の交通法規違反で事故を招いたことからすると、通勤災害と認められないか、認められても給付制限される可能性もあります。

就業時間外の事例

Q. 従業員が上司に無断で残業していてけがをした場合、労働災害に認定されま
すか?

A. 無断残業中であっても、休日に事業場内を散歩する等のように事業主の支配を全く離れているときとは異なり、一般には事業主が指揮命令をなしうる余地があるため、業務遂行性が認められます。

質問の場合も、事業施設の状況に起因する災害であれば、業務起因性も認められ、労働災害として認定されるといえます。

Q. 会社が主催する運動会に参加していた従業員がけがをした場合、労働災害に認定されますか?

A. 社内の運動会や飲み会などは、労働者の本来業務とは別物ですが、厚生・慰安の意味合いがある反面、営業活動としての意味合いも否定できず、これらが業務関連なのか、私的行為なのか、その峻別は極めて難しい問題をはらんでいます。

質問の場合も、一般には業務起因性がないものといわざるを得ませんが、それが対外的な運動会か、内々での運動会かによって労災として認定される基準が定められており(平成12年5月18日 基発366号)、一定の条件を満たせば労働災害として認定される可能性もあります。 個別の事案により判断が異なるところです。

Q. 出張中、会社指定ではないホテルに宿泊し、火事に遭って火傷をした場合、労働災害に認定されますか?

A. 出張は事業主によってその期間や場所、業務が定められるので、一連の過程全部が事業主の指揮下にあるものと考えられます。よって、出張中の災害は、業務起因性があるものと推定され、その遂行中に生じた災害は、一般的には業務災害として扱われます。
しかし、出張中の私的な行為における災害については、たとえ定められた出張期間内に生じたものであっても、労働災害とは認定されません。出張中の行動は、事業場施設外での行動であるため、その態様が複雑であり、難しい問題を多くはらんでいます。

質問の場合、恣意的・私的行為であると判断されてしまう可能性がありますが、会社指定以外のホテルに宿泊したことに合理的な理由があるのであれば、労働災害であると認定される可能性もありますので、諦めずに業務との関連性を主張・立証することも必要でしょう。

Q. 託児所に子どもを預けて会社に向かう途中でけがをした場合、労働災害に認定されますか?

A. 通勤自体が合理的な経路および方法によってなされていても、途中で通勤経路を逸脱または中断してしまった場合、逸脱・中断中における事故は通勤災害と認められません。また、その後通常の経路に戻っても通勤災害と認められない場合があります。

質問のケースの託児所の経由が、合理的な経路の範囲内(最短距離でなくとも合理的経路といえる場合は多々あります)にあるのであれば、そもそも経路の逸脱・中断はないということになりますが、合理的な経路の範囲外の場合(経路から大きく外れる場合等)、経路に戻った後の事故であれば、通常は通勤災害と認定されるでしょう。

Q. 帰省先住居から単身赴任先住居へ帰る際に駅でけがをした場合、労働災害に認定されますか?

A. 労災保険法は、平成17年の法改正で、単身赴任者の赴任先住居(勤務先へ通うための住居)と帰省先住居(家族が暮らしている住居)との間の移動についても通勤と認められるように適用範囲が拡大されました。

労働日でない日の移動中でも労災保険が適用される場合があります。 ただし、赴任先住居と帰省先住居間の移動が無制限に通勤と認められるわけではなく、家族である子や配偶者が一定の条件(18歳未満の子が帰省先住居で就学中であるなど)に当てはまる場合でなければなりません。

ご質問の場合も、厚生労働省による通勤災害の適用範囲や改正労災保険法に照らし、条件を満たすものかどうか検討する必要があります。

過労死やうつ病自殺による事例

Q. 業務上災害でけがをした従業員が長期療養中に自殺した場合、労働災害に認定されますか?

A. 労災保険法では「労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。」と定められていますが(12条の2の2)、近年業務関連による自殺が多発し、自殺者遺族の勝訴判決が続くようになりました。

このような事態を受け、厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の認定基準」という通達を定めました(平成23年12月26日基発1226号第1号)。 自殺事案の場合、この通達に定められた基準を満たしているか否かが最初の分水嶺となります。

質問の場合ですが、長期療養に入った事実自体は業務災害を原因としたものであった可能性がありますが、自殺してしまった時期が離れるほど、業務災害と認定されない可能性が高くなります。

【類似事案の裁判例】
転落事故により頭部障害を負った労働者が事故から約2年2か月後に自殺したという事案において、期間の経過のほか、障害がかなり回復していたことと、神経症の既往症があったこと等を理由に業務災害ではないと判断されました。(大阪地判平成9年10月29日)

Q. 炎天下で道路工事を行っていた従業員が日射病で死亡した場合、労働災害に認定されますか?

A. 労働基準法施行規則別表第1の2では「暑熱な場所における業務による熱中症」を業務上疾病のひとつに挙げられており、政府はその認定基準を定めています。

質問の場合も、この認定基準に該当する行動と疾病であると認められれば、業務災害として認定されます。

原則として日射病や熱射病も熱中症に含まれますが、業務災害としての認定の可否は、さらに作業環境や労働時間、本人の身体状況等も加味した上で、総合的に判断されます。

Q. 過激な業務を続けていた従業員が過労死した場合、労働災害に認定されますか?

A. いわゆる過労死は、労災保険では「脳・心臓疾患に伴う業務上死亡」と扱われており、厚生労働省は平成13年12月12日付で「脳血管疾患及び虚血性疾患」の改正認定基準を定めています。

質問の場合も、同基準に該当するのであれば、まずは労働災害として認定されるといえます。

また、最高裁判所は上記基準を緩和した考えのもと、労働災害にあたるか否かの判断を行っています(最判平成18年3月3日)。 この最高裁の考えに沿った状況にあてはまるのであれば、最終的には補償を受けられるといえます。

Q. 過激な業務を続けた従業員がうつ病にかかり自殺した場合、労働災害に認定されますか?

A. 厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の認定基準」という通達(平成23年12月26日基発1226号第1号)を定めていますので、まずはこの基準を満たしているかどうかがポイントになります。

過酷な業務の末、うつ病にり患し、その後自殺に至ってしまう事例について、昨今、労災認定を肯定する裁判例がいくつも出ています。

【参考判例】
コンピューターソフト開発の部長職にあった労働者が、強い心理的負担と長時間労働(毎月100時間前後の時間外労働)とがあいまって、うつ病にり患し自殺した事案について、労基署が労災を認定せず、不支給処分をしたのですが、裁判所はこの処分を取り消しました(東京地判平成22年3月11日)。

質問の場合も、過酷な業務の具体的内容(時間外労働の時間数等)や、業務上、心理的に強い負担となる事象が存在していたことなどが立証できれば、業務災害と認められる可能性があるでしょう。

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