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解体工事における屋根踏抜事故の工事孫請け被災者に対し、損害賠償が認められた裁判例
事故の概要
本件は、建物新築工事における解体作業中の事故です。
本件事故は、本件工事の孫請人である被災者が、スレート葺鉄骨造のガレージ二棟の解体作業中、高さ約4.5メートルのスレート葺屋根の上にあがって、スレートを止めてあるボルトをはずしていた際、誤ってスレートを踏み抜き屋根から墜落し、頭部外傷、脊髄損傷の重傷を負った事故です。
この傷害により、被災者は、四肢が完全に麻痺し一生涯車いすでの生活を余儀なくされました。
(東京地判昭和57年3月29日判例時報1057号82頁)
認められた損害賠償額
損害賠償が認められた理由・解説
【本件の請負関係等】
本件事故につき、被災者は、C組という現場労働者の集まりの親方でした。
被災者は、次の者を被告として損害賠償請求を行いました。
・元請人である被告A
・下請人である被告有限会社B1、及び同社代表者のB2
被告Aは、請け負った倉庫の新築工事の一環として、同現場に存在したスレー卜葺鉄骨造のガレージ二棟の解体工事も依頼されましたが、不慣れなために、解体工事を被告B1社に下請けに出しました。
被告B1社は、鉄骨、金物等の工事を請け負う会社ですが、従業員2名ほどの規模で代表者B2が現場に出て作業の指揮、監督をする個人的色彩の強い会社です。
工事の規模によっては、施工するのに必要な労働力が足りないため、C組のような労働者の集まりで労働力のみを提供する従属的下請業者を雇い、作業に従事させてきました。その関係は1回限りでなく、ある程度継続的な関係として続いてきたものであり、本件に関してもこれまでの関係性に基づき、C組に下請けに出していました。
一方で、C組は店舗や工場を所有せず、わずかな工具等のみを所持しているだけで、足場板、安全ネット、命綱、ヘルメット等の安全用具は一切所持せず、現場に用意してくれたものを使用し作業を行う、労働力のみを提供する下請専門の労働者集団でした。
本件の主な争点
被災者と請負関係にある被告B1社と被災者との間で安全配慮義務違反が成り立つか否か
裁判所の下した判断
・被災者は、作業を命じられた場所で資材及び設備の提供を受けて作業していたものであり、労働環境を自ら決定する立場になかった。
・一方、被告B1社は被災者らを被用者同然に使用して、その労働力を何時、どのような現場でどのような作業に従事させるか等につき、指揮、命令権を有していたものであり、被災者と被告B1社との間には、使用、従属の関係があったものといえる。
したがって、本件解体工事も上記関係を前提にしてなされたものと認められるので、被災者と被告B1社との間で本件解体工事につきなされた契約は、請負契約の形式はとってはいるが、その実質は使用従属の関係にある労働契約とみることができ、被告B1社は被災者に対し、安全保護義務を負う。
そして、被告B1社には、本件現場に歩み板を設け、防護ネットを張るなど、踏み抜きによる墜落防止措置が全く講じなかったので、安全配慮義務違反があるとして、損害賠償を命じました。
コメント等
本件裁判例は、形式的には請負関係にある被災者が「誰を相手方として責任追及するか」について、判断を下した裁判例です。
弁護士法人シーライト藤沢法律事務所では、労働力のみを提供する親方やその元で働く方が勤務中に転落事故等の労働災害に遭い、お困りの方からのご相談を承っています。
労災分野では、重層的・複雑な元請・下請関係の中で、「誰を相手方として責任追及できるか」「複数可能な選択肢の中で、誰を責任追及した方が確実に損害賠償を獲得できるか」について、高度な法的判断が必要になる分野です。建設工事等の複雑な契約関係にある中で労働災害に遭われた方は、お早めにご相談ください。
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