被災者は、団地の建設工事現場で、外部消火栓の配管工事業務に従事していました。建物4階部分の窓枠に足をかけて作業をしていたところ、同じ建物の8階部分から、長さ4メートル・重さ約20kgの足場板が落ちてきて、被災者の左足に激突しました。
事故当時、同じ建物の上階部ではコンクリートの型枠解体工事が行われていました。その解体工事の作業員が、足場を伝って移動しようとして、足場板に足を踏み出した途端、8階部分の足場板がビティ(枠組足場)から外れて落下してしまい、落下した先には被災者がいたのでした。
この事故によって、被災者は、左足部挫滅創、第二中足骨複雑骨折、外傷性骨萎縮の傷害を負いました。
(東京地判昭和50年12月24日判例時報819号59頁)
約200万円(これとは別に、労災保険から補償を受けています)
本件事故で、足場板を落下させた作業員は、建物建設工事を元請した会社の孫請会社の従業員でした。直接的な加害者はこの作業員ですが、裁判所は、元請会社が使用者責任を負うとして、元請会社が被災者へ損害賠償金を支払うよう命じました。
一般の方からすると、この作業員本人や孫請会社が被災者へ賠償すべきように思えるかもしれませんが、法律には、使用者責任(民法715条)という考え方があります。
会社側(元請会社)には、自社の従業員が第三者に与えた損害に対して、会社自身が賠償責任を負うという考え方です。
本件では、裁判所が元請会社の使用者責任を認めたので、労災事故を起こした作業員の責任を、元請会社が負うことになりました。
裁判所は次のように認定しています。
この足場板はもともとビティへの連結固定が不完全だった。そして、作業員が連結状態を確認することなく不用意に足を乗せたために、足場板の一端が支点から外れて落下した。そもそも、足場板を高所から落下させることは極めて危険であり、足場上での作業にあたっては足場板を落下させないように十分に注意すべきだ。しかし、このような事故が起きたのだから、作業員は明らかに注意義務を怠ったといえる。
「本件工事現場において躯体工事の下請業者・孫請業者は被告(元請会社)の手足に等しく、本件工事に関しては被告(元請会社)と一体の関係にあった」と言えるので、「被告(元請会社)の下請業者・孫請業者の従業員も同条(民法第七一五条)にいう「被用者」にあたる」。
つまり、使用者として責任を負うべきだということです。
一方、怪我をした被災者にも2割の過失責任があると判断しました。
建設工事現場での作業には、「種々の危険が伴っていることは明らかであり、ことに上部階でコンクリート型枠解体作業が行なわれている場合物が落下して来る可能性があることは容易に予期しうる。従って設備関係の専門職人も、かかる状況下にその下部階で敢て作業をなす場合には、ある程度その危険を予期すべきものである」。そのため、コンクリート型枠解体工事が上部階で行われていることを承知しながら、自己の作業を進めていた被災者にも、2割程度の過失がある。
裁判所は、今回の事故が起きた責任原因について、裁判所は会社側(元請会社)に8割、被災者に2割の責任があると判断しました。そのため、損害額全体の8割にあたる約200万円を被災者に支払うよう、会社側(元請会社)に命じました。
弁護士法人シーライト藤沢法律事務所では「建設現場での落下物による事故に遭われた方」「下請・孫請会社の従業員で被災した方」からのご相談を承っております。
労災分野では、事故早期からの証拠収集や適切な後遺障害等級獲得のための医学的検査などが重要になってきます。
本件のような労災事故に遭われた方は、お早めにご相談ください。
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