本件は、建物等の解体業を営む被告にアルバイトとして採用された被災者が、会社(本件の被告は、個人事業主でしたが、便宜上「会社」と呼称します)が請け負った家屋の解体業務において、高さ約3.5メートルの2階の開口部から1階へ廃材を下す作業に従事していた際、開口部から転落し、脊髄損傷等の傷害を負い、両下肢麻痺等(1級3号)の後遺障害が残った事故です。
会社が転落防止措置を講じるべきであるのに、これを怠ったとして被災者及びその父母からの会社に対する不法行為に基づく損害賠償請求が認容された事例です。
(東京地判平成17年11月30日 判例時報1929号69頁)
被災者本人へ約8100万円(この他に、労災保険等から約1900万円の支払い)
被災者父・母へそれぞれ100万円
本件での安全配慮義務違反は、以下の通りです。
・事故当時の被災者と科現場責任者との距離は、5メートル程度であったことは明らかである。したがって、被災者とは別の作業をしていたとはいえ、現場責任者は、被災者の作業内容を認識することは可能であった。
・本件事故が発生したのが、被災者が鉄骨の受渡作業から投げ下ろし作業へ変更してすぐであるか、あるいは、数回投げ下ろし作業をした後であるかは判然としないものの、当初の受渡し作業を開始してからしばらく時間が経っていたことは明らかである。その間、被災者はヘルメット、安全帯を用いておらず、フックをかけるためのポールを立てたり、親綱を張ってフックを掛けるなどの措置もとっていなかったのであるから、被災者が転落しそうになった場合にはこれを防止するすべがない。このことは、会社においても十分認識し得たというべきである。
・被災者が高さ3.5メートル程の位置から1階へ突起物のある鉄骨を下ろすにあたり、その作業が手渡しによるものであったとしても、転落の危険は十分に考えられるから、会社において、転落防止のための何らかの措置をとるべきであった。しかし、会社は転落防止のための措置をとらず、被災者に対し、安全帯の着用やフックをかけるための措置等について具体的に注意を促すことをしなかったのであるから、会社には、本件事故につき過失があるというべきである。
以上の点から、裁判所は会社の安全配慮義務違反を認め、会社側に損害賠償を命じました。
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