事例7
  • 労災保険の認定前に亡くなってしまった事例

  • 職業/業務内容

    電気工事士

  • 症状

    石綿肺(じん肺症に起因する慢性胸膜炎)

  • 現在の状況

    故人

  • 年齢

    80代

  • 勤務形態

    正社員

  • ばく露時期

    昭和30年(1955年)代~平成10年(1998年)代

  • ばく露した状況

    アスベスト含有建材が用いられている壁の裏や天井裏などで電気配線作業に従事していて、アスベストにばく露した。

  • 申請をお勧めした給付金制度

    ①労災保険③建設アスベスト給付金制度

  • ご相談者

    被災者の子

①ご相談内容

お父様が亡くなったとのことで、娘様からのご相談です。

被災者は、昭和30年代~平成10年代の約40年間、電気工事士として会社に勤め、ビルや商業施設、病院などの建設現場において電気配線工事作業に従事していた。アスベスト含有建材が用いられている壁の裏や天井裏などで配線工事を行う作業であったため、作業現場ではアスベストの粉塵が舞っていた。そのため、被災者は、日常的にアスベストの粉塵を吸い込んでいた。
被災者は数年前から息切れが出現し、治療を続けていたが、先日、じん肺症の一種である石綿肺を発症し、これが原因で亡くなった。
被災者は、闘病中に労災保険へ療養補償給付の申請をしていたが、認定結果が出る前に亡くなってしまったため、補償は受けられなかった。このような場合、遺族は労災から補償を受けることができるのか?

以上のようなご相談をお受けしました。

②弁護士からのアドバイス等

1.労災保険

療養補償給付とは、病院での入院・通院にかかる費用や、薬代などについて、治癒するまで労災保険から給付を受けられるものです。2年の時効はありますが、被災者がお亡くなりになってしまった場合でも、請求が可能です。一方で、本件では、労災の認定が下りる前に請求者である被災者がお亡くなりになってしまいましたので、ご遺族を請求者として、改めて申請する必要があります。これを「未支給の労災保険請求」といいます。
労災保険には、複数の補償がありますが、お話を伺う中で、療養補償給付以外にも、休業補償給付や遺族補償年金、葬祭料などを請求できる可能性があることがわかりました。そのため、奥様が請求者となり、改めて労災へ申請することをお勧めしました。

2.建設アスベスト給付金制度

労災保険に加えて、こちらの制度にも申請してみようということになりましたが、まずは労災保険への申請をお勧めしました。というのも、建設アスベスト給付金制度は、労災保険の認定が下りている場合、必要書類などを省略して申請することができるからです。
そのため、まずは労災保険の申請からご依頼をいただき、受任しました。

③所感・まとめ

ご相談者様は、全くの別件で当事務所へいらした際に、所内に貼り出してあったアスベストのポスターを見て、ご相談くださいました。ご家族がアスベストの被害によってお亡くなりになったばかりであると伺い、大変驚いたことを覚えています。奥様はご主人を亡くされたばかりで、深い悲しみの中におられるため、娘様の協力も得ながら、三人四脚で申請を進めていくこととなりました。
どなたであっても、ご家族をなくしたばかりの状況で、ご遺族だけで労災保険の申請を進めていくのは大変な困難でありましょう。しかし、そのような状況であっても、時効はどんどん過ぎてしまいますし、認めてもらうための資料・証拠もどんどん失われていってしまいます。専門家へご依頼いただければ、ご遺族に代わって、複雑な書類の作成や各所とのやり取りを行うことができますので、アスベスト被害によってご家族を亡くされた方は、まずはご相談だけでもしていただくことをお勧めいたします。