事例2
  • 中皮腫を発症した法人代表者の事例

  • 職業/業務内容

    大工、内装工、解体工

  • 症状

    中皮腫

  • 現在の状況

    治療中

  • 年齢

    70代

  • 勤務形態

    法人代表者

  • ばく露時期

    昭和40年(1970年)代~平成10年(2000年)代

  • ばく露年数

    約30年

  • ばく露した状況

    住宅の新築・増改築(リフォーム)・解体工事に従事していた。建材にアスベストが含まれていたため、建築現場での工事作業中にアスベストにばく露した。

  • 申請をお勧めした給付金制度

    ②石綿健康被害救済制度

  • ご相談者

    ご本人

①ご相談内容

被災者は、1970年代から職人として住宅の新築・増改築・解体工事に職人として従事していました。
15年ほど職人として働いた後、夫婦二人で建設会社を立ち上げ、被災者は法人代表者に就任し、同様の業務に従事していました。
その後、10年ほどで被災者の体調不良により仕事が出来なくなったそうです。
2010年ころより心臓疾患に関し治療を続けていたところ、定期健診により、アスベスト関連性胸膜プラークが発見され、主治医から「中皮腫であろう」との診断を受けました。
そこで、「アスベスト被害者に関し給付金が出ると聞いたので、請求を行いたい」と、被災者からご相談をお受けしました。

②弁護士からのアドバイス

1.アスベスト被害者の救済制度のご説明

アスベスト被害者の方は、①労災保険、②石綿健康被害救済制度、③建設アスベスト被害救済制度が利用できる可能性があります。
①に関しては労働者または労災保険の特別加入者の方が対象です。
②に関しては、労働者かどうかなどを問わず、広くアスベストばく露者を対象としています。
③に関しては、労働者・一人親方・一定の規模以下の事業主または法人代表者の方が対象です。
今回のご相談者様は、労働者でも、労災保険特別加入者でもなく、①を利用するのは難しいと思われました。また、②に関しては、「一定の規模以下の事業主または法人代表者」として対象になり得ますが、2021年9月現在、この「一定の規模」を定める厚労省令が制定されていないため対象かどうか判明せず、また、建設アスベスト被害救済制度の給付が開始されていませんでした。
しかし、②は、アスベストばく露者を広く対象者とする制度ですから、相談者の方が対象になることは明らかでした。


2.石綿健康被害救済給付をまず受けて、建設アスベスト被害救済給付に備えることをアドバイス

そこで、石綿健康被害救済給付と建設アスベスト被害救済給付の申請書類・医療資料は、かなりの程度重複・同一であることが予想されましたので、まずは、石綿健康被害救済給付の申請を進めることをアドバイスいたしました。
石綿健康被害救済給付は、ご存命の方(療養中の方)の場合には、【1】医療費:指定疾病に関する医療費の自己負担分が免除(石綿健康被害医療手帳の交付)【2】療養手当:103,870円/月を受けることができます。

③所感・まとめ

相談者の方は、申請について何も分からず、疾病のため色々と自分で行うのはしんどいとのことで、石綿健康被害救済給付の申請を当事務所にご依頼頂くこととなりました。
本件のように、「労働者でない」「労災保険にも特別加入していない」という場合でも、アスベスト被害者向けの救済制度が利用できる場合がございます。「過去にアスベストを扱っていたことがある」という方で、
①中皮腫
②肺がん
③石綿肺
④びまん性胸膜肥厚
⑤良性石綿胸水
に罹患した方またはそのご遺族は、諦めずに、法律事務所に相談することをお勧めいたします。
また、建設アスベスト被害救済制度に基づく救済給付は、2022年春ごろを目途に給付申請がスタートいたしますが、アスベスト被害者の方が悪化または死亡してしまう前に、今のうちから医療記録・資料などを取り寄せておくことが重要になります。その点でも、今のうちから早めに法律事務所に相談することをお勧めいたします。